中国ワイナリー訪問|醸造哲学──「原料こそが全て」立蘭ワイナリー(リーラン Lilan)訪問記
寧夏賀蘭山東麓ワイン聯合会から2級に認定された中国ワイナリー
立蘭(リーラン)ワイナリーは賀蘭山東麓に2013年に設立され、2021年に寧夏賀蘭山東麓ワイン聯合会から2級に認定された中国ワイナリーです。(現時点では1級ワイナリーはなく2級が最高位)名称の「立蘭」は賀蘭山に立ち、賀蘭山を目指すという意味合いがあります。ミドル・ハイエンドワインメーカーに位置付けられています。

有利な環境を最大限生かした有機栽培と自然の厳しさ
葡萄畑の面積は1500亩(100ヘクタール)です。この産地は日照時間は長く、昼夜の気温差は大きい。また風が吹いて、降水量が少ない(乾燥)ため病害虫は少なく、葡萄の木は病気になりにくい。つまり有機栽培に適しています。(有機栽培の認証を得ています)
一方、「厳しい」のは冬季の埋土です。土を被せてあげないとブドウの木は枯死してしまいます。100ヘクタールの畑すべて埋土するのは大変な労力が必要です。(人工は毎年確保できているそうです)

栽培品種の戦略
栽培品種はカベルネ・ソーヴィニヨン、マルスラン、シャルドネが主で、将来的にはマスカットハンブルグと山葡萄(Vitis Amurensis)を交配した新品種の北玫(Bei Mei)、北玺(Bei Xi)を導入することを検討しています。
「原料こそが全て」——醸造哲学
醸造方法ではGravityと低温マセラシオンを採用しているところがユニークです。Gravityは葡萄の完全性を保ちながら処理を進めます。梗は人工で取り除き、さらに櫂入れで皮を均一にかき混ぜるという丁寧なプロセスを踏みます。
経営陣の言葉が印象的でした。「良い食材があれば、何も加えなくても美味しい。醸造は補足的なもの」この哲学が、このワイナリーの基本精神として流れています。
樽選択の厳密さも印象的でした。フランス製253リットル樽を使用し、白ワインは6ヶ月、赤ワインは1年以上の熟成を行っています。最高級ワインと廉価ワインで樽の使用回数を明確に区別しているという点も注目すべき点です。

テイスティングワイン
シャルドネ、赤ブレンド2種、カベルネ・ソーヴィニヨン主体2種、市場未発売のマルスラン主体の赤ブレンドを試飲させていただきました。
彼らのブランドワインは「览翠(覧翠)」と言いますが、これは杜甫の詩からの引用です。「山の頂に登り、すべての山を見下ろす」という意味が含まれています。

おわりに
立蘭ワイナリーの訪問を通じて見えてきたのは、「極限環境をいかに利点に変えるか」という経営センスです。厳寒、強烈な日差し、低降水量——これらの条件は一見すると制約に見えますが、同時に高品質ワイン製造の自然な条件になります。加えて、丁寧な栽培管理、原料第一主義の醸造哲学、そして戦略的な品種選択がこのワイナリーの基盤を形成しています。
立蘭ワイナリーは賀蘭山東麓産地の中堅・中小規模ながら、強いこだわりを持つ模範的なワイナリーとして位置付けられていると理解しました。
訪問日時:2026年7月
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Edited by 新井達也
JSA公認ワインエキスパート
Vin Euphony代表


