中国ワイナリー訪問|賀蘭山東麓の二級ワイナリー 志輝源石ワイナリー(ユエンシーYuanshi)――石切場から再生した中国庭園と精緻な醸造哲学

はじめに|石切場を再生するところから始めたワイナリー

中国ワインの銘醸地として世界中から注目を集める寧夏イスラム族自治区・賀蘭山東麓(がらんさんとうろくHelan Mountain East Foothills)。中国全体のワインの約50%を産出するこの中国最大の産地において、現時点で最も高い寧夏公式の格付け「二級ワイナリー」に名を連ねる名門中国ワイナリーが「源石酒庄(志輝源石)」です。

かつての採石場跡地を緑化し、10億元規模の長期投資によって生まれたこのワイナリーは中国伝統建築の優美な佇まいと、科学的根拠に裏打ちされた近代的な醸造設備が見事な調和を見せています。今回、実際に現地を訪れ、その栽培環境、セラー設備、そしてワインの仕上がりを視察してきました。

源石とは石がこのワイナリーの源であるという文字通りの意味です。道や建物のいたるところに石がふんだんに使われています。

テロワールと過酷な気候がもたらす凝縮感

源石酒庄が位置するのは、標高約1,160mに広がる緩やかな傾斜地です。西に聳える標高3,500m級の賀蘭山がシベリアからの寒風や砂嵐を遮り、東側には黄河が流れるという、ブドウ栽培における天然の防壁と水源に恵まれています。

  • 類稀な日照量と乾燥気候:年間日照時間は約3,000時間に達し、生育期間は早朝から20時過ぎまで強い太陽光を浴びます。年間降水量はわずか約200mmに対し蒸発量は約2,000mm、平時の空気湿度は約10%という極めて乾燥した環境のため、病虫害の発生リスクが極度に抑えられています。
  • ミネラル豊富な痩せた土壌:小石や砂礫、砂質土が主体の土壌は有機質が低く、ブドウ樹は水分と養分を求めて地中5m以上の深さまで直根を伸ばします。これがワインに独特の骨格と塩味を帯びたミネラル感を与えています
  • 南北畝と冬の「埋土防寒」:強い光を両面から均等に取り込むため南北方向に畝を配置。冬期はマイナス20度近くまで冷え込むため、収穫・剪定後の晩秋にブドウ樹を地中40〜50cmに手作業で埋め戻す「埋土防寒」を行い、春に再び掘り起こすという、膨大な手間をかけた栽培が続けられています。

現在、約267ヘクタールの自社畑で16品種を栽培しており、収穫はすべて手摘みで行われ、2時間以内にワイナリーに搬送して厳格な房選別・粒選別が行われています。

徹底した重力移動と贅沢な木樽設備

ワイナリーの外観は漢代の冠帽を模した石造り建築で、古民家のレンガや廃工場の耐火レンガを再利用したエコ・デザインが目を引きます。しかし一歩発酵棟に足を踏み入れると、そこには妥協のない醸造設備が整えられていました。

  • 中国農業大学との15年にわたる産学連携:栽培・醸造技術の両面で中国トップクラスの学術研究機関と提携し、安定した品質管理体制を敷いています。
  • 果実を傷つけないグラビティフロー:2階の選果ラインからレール上のホッパーと破砕機を経て、重力を利用して直下の発酵タンクへ投入。発酵後は直下の地下セラーへ自然流下で移送する設計です。
  • 用途に応じた多彩な発酵容器:フレッシュ&フルーティーなワイン用の温度制御付きステンレスタンクに加え、1基あたり約70万元(日本円で約1,500万円相当)を投じた15トンの大型輸入オーク槽、さらにはトップレンジ用の3トン・5トンの小型木製発酵槽を備えています。
  • 地下5メートルの恒温恒湿セラー「沉香窖」:年間を通じて温度・湿度が保たれる地下セラーにはフレンチオーク(約70%)とアメリカンオーク(約30%)がずらりと並びます。樽は3年間で2回のみ使用という厳しい基準で運用され、樽熟成後にさらに1年半以上の瓶熟成を経て出荷されるという、贅沢な時間をかけた熟成プロセスが取られています。

個性の異なるフラッグシップと挑戦的なキュヴェイン

巨大なレストラン空間でワイナリーを代表する「山」シリーズを含む5種類のワインをテイスティングさせていただきました。ブレンド中心です。エチケット(ラベル)は石をモチーフにしたイラストを使っています。

賀蘭山東麓の特徴と言える高い酸と高い果実味の融合、滑らかなタンニンをとことんまで追求したようなわかりやすく親しみやすいワインという印象です。赤はすべてブレンドで上記を体現しています。

  • 石黛 Dry White 2025 シャルドネ、イタリアンリースリング、プティマンサン、ヴィオニエ
  • 山之語 Dry Red 2023 カベルネ・ソーヴィニヨン、マルスラン、ドルンフェルダー、プティヴェルド
  • 山之子 Dry Red 2020 カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、カベルネフラン、マルスラン、ドルンフェルダー
  • 山之魂 Dry Red 2021 カベルネ・ソーヴィニヨン、カベルネフラン、メルロー、ドルンフェルダー、プティヴェルド
  • 石黛 Rose 2025 カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、マルスラン、ドルンフェルダー、カベルネフラン

源石ワイナリー山之子の試飲レポートはこちら

おわりに

かつての荒涼とした採石場を生態修復によって蘇らせ、中国伝統の美意識と最新の醸造工学を融合させて世界水準のワインを生み出す、賀蘭山東麓の矜持を体現したサステナブル・エステートといえるでしょう。ワイナリーを訪問する客は後を絶ちませんでした。

訪問日時:2026年7月

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Edited by 新井達也
JSA公認ワインエキスパート
Vin Euphony代表

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