中国ワイナリー訪問|賀蘭山が目の前に広がる120ヘクタールの自社畑と「単一品種」へのこだわり —— 仁益源ワイナリー(レンイーユエン Renyi Yuan)
はじめに|賀蘭山に最も近いワイナリー
中国ワインの銘醸地として世界中から熱い視線が注がれる、寧夏イスラム族自治区・賀蘭山東麓(がらんさんとうろく)。その中でも賀蘭山に最も近いエリアの一つ、銀川・金山産区に堂々たる敷地を構えるのが「仁益源ワイナリー (レンイーユエン Renyi Yuan Winery)」です。
今回は、この気鋭の中国ワイナリーを実際に訪れ、その広大な畑、醸造施設、そして寧夏のテロワールを実直に映し出したワインの数々を確かめてきました。

賀蘭山が育む過酷で恵まれたテロワール:約120ヘクタールの自社畑
仁益源ワイナリーの最大の特徴の一つは、約120ヘクタールにおよぶ荒れはてた礫石土壌を自力で開墾し、この広大な自社ブドウ畑をきめ細かく管理している点です。
土壌と開墾の軌跡
畑の足元を見渡すと、見渡す限りの礫石(れきせき)土壌。かつては人の頭ほどもある大きな石が転がっていた荒野を、膨大な労力とコストを投じて開墾したといいます。このミネラル豊富な痩せた小石交じりの土壌が、ブドウの根を深くへと誘います。
乾燥と寒暖差が生む健全な果実
年間降雨量はわずか約200mmと極めて乾燥しており、病害虫の心配がほとんどありません。昼夜の寒暖差は約10℃あり、背後にそびえる賀蘭山が北西からの冷酷な寒流を遮る天然の防壁となっています。
緻密な栽培管理と「冬の埋土」
水はドリップ灌漑(滴灌)で精密にコントロール。強い日照による糖度の急激な上昇を抑えるため、畝間には適度に低い草を残して小石からの照り返しを和らげるなど、独自の工夫が凝らされています。そして収穫期には200名以上の人手を動員してすべて手摘みで行われ、冬期には凍害から樹を守るため1本1本土に埋めるという途方もない手間暇がかけられています。

ぶどう品種
主要品種はカベルネソーヴィニヨン、マルスラン、メルロー、カベルネフラン、シャルドネなどです。リースリングも試験栽培中とのことでした。
醸造哲学:「ボルドーの模倣」を脱し、寧夏の風土を純粋に引き出す
「私たちはボルドーを模倣する気はありません。表現したいのは、ここ寧夏の土地そのものです」案内をしてくれた醸造責任者の康凯さんの言葉に、このワイナリーの思想が集約されていました。
100% 単一品種醸造へのこだわり
一般的にブレンド(混醸)は各品種の欠点を補い合える反面、テロワールの純粋な個性をぼやかしてしまう側面があります。仁益源酒庄では、「単一品種で造ってこそ、そのブドウがこの土地でどう輝くのかが分かる」という揺るぎない信念のもと、混醸を行わず単一仕込みを貫いています。
精密な最新醸造設備
発酵エリアには1トン〜30トン規模まで多彩なタンクが整然と並び、区画やロットごとの細やかな仕込みに対応。ボトリングにはイタリア製の負圧充填ラインを導入し、窒素ガス置換を施すことで瓶詰め時の酸化リスクを極限まで低減しています。
樽熟成と十分な瓶内熟成
地下セラーにはフランス産のオーク樽が並び、新樽比率40%で12〜15か月の熟成。さらにボトリング後、出荷前に約2年間の瓶内熟成(瓶儲)を経てリリースされる点にも、品質本位の姿勢が如実に表れています。

絶妙なロケーションを最大限活用したオーベルジュ発展計画
レンイーユエンワイナリーは賀蘭山に最も近い場所にあると説明いただきました。確かに目の前まで山が迫ってくる迫力があります。現在新しいレセプションセンターを建設中で、そこに宿泊棟、テイスティングホール、レストランを設置する予定です。以下の写真は準備中の宿泊部屋から臨んだ賀蘭山の眺望です。
夕暮れ時に賀蘭山の山影を眺めながらワインを愉しむ——。訪れるゲストが滞在を通じて、風土を五感で体感できる設備が整いつつあります

テイスティングで見えた「中国ワインの現在地」
今回の訪問では、シャルドネの白をはじめ、中国ワインのアイコン品種であるマルスラン、カベルネ・フラン、そしてトップキュヴェのカベルネ・ソーヴィニヨンをテイスティングしました。
驚きをもたらすマルスラン
グラスに注いだ瞬間に立ち上るスミレやバラのような鮮烈なフローラルなアロマと、凝縮した果実味。日本市場ではまだ馴染みが薄い品種ですが、「なぜ世界が中国のマルスランに注目するのか」がはっきりと理解できる強い説得力があります。
清爽さと熟成感を兼ね備えたカベルネ・フラン
青ピーマン的なピラジン香を心地よく上品にまとめ、過度な重さや苦味を感じさせないクリーンで爽快な仕上がり。
緻密なタンニンと10年以上のポテンシャルを秘めたフラッグシップ カベルネソーヴィニヨン
アルコール度数は15度近くありながら、豊かな果実味と酸が高いアルコール感を覆い隠し、きめ細やかなタンニンが長く余韻を支えます。

東洋哲学(老子の「道」、孔子の「和」)をテーマにした重厚なラベルデザインを含め、単なる西洋ワインの追従ではない、東洋のプレミアムワインとしての明確なアイデンティティが感じられました。
おわりに
仁益源ワイナリーは、賀蘭山直下の過酷な礫石テロワールに真っ向から向き合い、ボルドーの模倣ではない「100%単一品種仕込み」で中国・寧夏ワインの真価と東洋の美意識を堂々と体現する実力派ワイナリーでした。
訪問日時:2026年7月
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Edited by 新井達也
JSA公認ワインエキスパート
Vin Euphony代表


