中国ワイナリー訪問|賀蘭山東麓の風谷が育む独自性―大看板「カベルネ」に頼らない皇蔻ワイナリー(ホワンコウ Huangkou)の挑戦
はじめに
ヴァンユーフォニー は、現地に直接足を運び、栽培現場、醸造設備、造り手の哲学、そして実際のワインを五感で確かめながら、日本の市場に真に価値あるワイナリーを発掘しています。
今回レポートするのは、寧夏回族自治区・賀蘭山東麓(がらんさんとうろく)に居を構える中国ワイナリー、「皇蔻酒庄(ホワンコウ・ワイナリー)」 です
中国神話を由来としたワイナリー名
「皇蔻」は日本では馴染みがない名前ですが、中国神話の中で天界の皇帝が地上の農耕を助けるために送った仙草に由来します。天から授けられた植物(ブドウの木)を地上でしっかりと育て、その恵みでワインを造るというストーリーです。
董事長の謝氏に出迎えていただきワイナリーをご案内いただきました。

荒野から生まれた黄金のテロワール―長城を望む「風の通り道」
皇蔻酒庄が位置するのは、賀蘭山東麓の中でも「干橙子(ガンチェンズ)」と呼ばれる南部のエリアで風谷と呼ばれる地域です。山脈の切れ目から吹き抜ける強い風が病害虫を遠ざけ、夜間の冷え込みと適度な乾燥をもたらします。
かつては不毛の地だったこの土地は、賀蘭山からの土砂が長い年月をかけて形成した扇状地(沖積土)であり、石灰質を含む砂礫質土壌が広がっています。「石が多く地温が上がりやすい北側のエリアに比べ、当園はブドウが緩やかかつ均一に成熟するため、酸・糖・フレーバーのバランスが崩れない」と謝董事長は胸を張ります。葡萄栽培は試験的に開始されてから約20年。ワイナリー自体の歴史はまだ10年程度ですが栽培面での経験の蓄積は深いです。

栽培の独自路線―カベルネ脱却による差別化
寧夏といえばカベルネ・ソーヴィニヨンが代名詞ですが、皇蔻酒庄はあえて異なる道を歩んでいます。
自社管理する約 130 ヘクタールの広大な畑で最も多く栽培されているのは、中国の気候に適したマルスラン、シラーです。さらにマルベック、プティ・ヴェルド、白ではシャルドネやプティ・マンサンを栽培。

「皆と同じカベルネを作っても市場での埋没は避けられない。産区のポテンシャルを多角的に引き出す品種構成で勝負する」という明確なヴィジョンに基づき、樹勢のコントロールと低収量、良好な通風を維持することで、病害に負けない健全なブドウを育てています
先進の醸造設備と、2018 年から導入する「新式オーク樽システム」
セラーに足を踏み入れると、そのクリーンさと設備の充実度に目を奪われます。
マイクロ醸造用の 1 トンタンクから 30 トンの大容量タンクまでが整然と並び、自社ラボ(検疫・分析室)も完備されています。

特に興味深かったのが、樽熟成における柔軟なアプローチです。
伝統的なフランス産オーク樽の運用に加え、オーストラリアから導入したOak Stavesシステムを 2018 年から運用しています。
トースト度や木目の異なるオーク板を自在に組み合わせ、ワインの両面から均一に接触させることで、過度な樽香に頼らず果実味を引き立てる緻密なアッサンブラージュを実現しています。

テイスティングワイン
試飲室ではまだ瓶詰めをしていないワインを含めて5種類テイスティングさせていただきました。プティシラー、マルベック、マルスラン、プティマンサンの半甘口および貴腐ワインです。

貴腐ワインは10 月下旬以降の秋の湿度を利用した「自然貴腐菌」の作用によって収穫されたブドウのみを用い、黄金色に輝くグラスからは蜂蜜やトロピカルフルーツの香気があふれました。


おわりに
中国ワインの進化スピードは、日本国内で想像されているよりもはるかに速く、かつ洗練されています。実際に中国現地ワイナリーを訪問して生産者から直接話を聞き、直接試飲してみると驚くことが多いはずです。ホワンコウワイナリーを訪問したこの私自身も大きな驚きの連続でした。
訪問日時:2026年7月
実際に味わったワインのより詳細な印象や日本市場での可能性などは個別にご相談ください。
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Edited by 新井達也
JSA公認ワインエキスパート
Vin Euphony 代表


