中国ワイナリー訪問|安諾ワイナリー(Anuo Winery アヌオワイナリー) —— スペイン風の丘に、中国ならではの個性が息づく
中国ワイナリー安諾酒庄を訪れた瞬間に「ここは中国?」と目を疑う。スペイン風の白亜のシャトーが丘の上に佇み、その周囲をぐるりと葡萄畑が囲む、それがアヌオワイナリーです。

海を感じる風土、清らかで瑞々しいワイン
産地は山東・蓬莱の丘山谷。花崗岩質の砂壌土は水はけがよく、ぶどうの根は深く伸びます。その結果生まれるのは、しつこさのない、新鮮で清々しい甘やかさを持つワインです。
品種はヨーロッパ系が中心だが中国新品種を導入
品種構成も見どころのひとつ。白はヴィオニエ、シャルドネ、プティ・マンサンに加え、シャルドネ×シュナン・ブラン×リースリングを交配した中国独自の新品種(Ecolly)も畑に植えられています。そして黒ブドウでは、海外では「気難しい品種」とされるプティ・ヴェルドが、この地では主役級の出来栄えに。ワイナリーの前には丘山ダム湖があり、そのほとりに植えられたマルスランは、この湖がつくる微気候の恩恵を受け、堂々たる単一品種として仕上げられています。

オーストラリアで学んだ醸造家のこだわり
今回案内いただいたのは醸造を率いる邵(シャオ)さんです。彼はオーストラリア ハンターヴァレーの有機栽培の老舗で修業を積んだ醸造家。毎年ヴィンテージごとに豪州の醸造所にも立ち、その経験を蓬莱の風土に注ぎ込んでいます。
その哲学はシンプル。「数より質」。収量をあえて抑え、瓶詰め後もじっくり寝かせてから市場へ。だからこそ全てのワインに熟成のポテンシャルが備わっています。
葡萄栽培:ミクロクリマと光の屈折まで計算したテロワール設計
湖畔から丘頂へ —— 高低差が生み出す独自のモザイク区画
敷地内には湖が広がる低地から小高い丘の頂上まで明瞭な高低差があり、区画ごとに劇的に異なる微気候が存在します。
- 丘の上(プティ・ヴェルド):強い春風によって自然と着果が抑えられ、水も滞留しないため根が驚くほど深くまで到達。凝縮しながらもタンニンが滑らかに熟した、世界でも類を見ない「主役を張れるプティ・ヴェルド」が育ちます。
- ダム湖の両岸(マルスラン):春に熱を蓄えた湖が地温を押し上げ、萌芽と開花を促すことで成熟期間を長く確保。さらに湖面からの光の乱反射が果房の下側からも満遍なく光を届け、芳醇でジューシーな果実味を蓄えます。
実験を重ねて辿り着いた「光拡散レインカバー」
雨の影響を受けやすい収穫期の対策として、数々の試行錯誤の末に生み出された特製カバー。果房全体を密閉する従来の袋掛けとは異なり、白いシェード状のカバーが雨を弾きつつ、上からの直射日光を温和に拡散・乱反射させて、葉の影になりがちな房の内側まで均一に着色・完熟させます。未熟な渋みや青さを排除し、健全な糖度とフェノール成熟を両立させる秘密兵器です。丈夫で水を弾く材質なので再利用されているそうです。

水はけのよい砂質土と、徹底した収量制限
花崗岩が風化した柔らかな砂質土壌は抜群の排水性を誇り、過剰な水分を抱え込みません。高幹仕立てによる風通しの確保や、樹間・列間を贅沢に取った剪定管理により、収量を厳しく制限。収量よりも一粒一粒の果皮の厚みとアロマの密度を追求しています。

醸造哲学:過度な抽出に頼らず、果実の生命感と伸びやかな酸を保つ
「重厚で甘ったるいワイン」からの脱却
醸造責任者の邵(シャオ)さんが目指すのは、濃厚さを誇示するスタイルではなく、冷涼な夜気と海風が育んだ「天然の美しい酸」を骨格にした、軽やかで繊細なテクスチャーです。人工的な補酸を行わずとも、完璧なpHバランスを保ったブドウから、食卓で何杯でも飲み進めたくなるエレガンスを引き出します。
小仕込み発酵と、特殊酸素透過タンク(Flex tank)の導入
区画ごとの個性を逃さないため、発酵は小容量タンクで個別に管理。さらに注目すべきは、オーストラリアから導入した微量酸素透過型タンクも活用しています。木樽の過度なウッディ香で果実味を覆い隠すことなく、微弱な酸素呼吸によってタンニンだけをきめ細かく丸く熟成させる現代的なハイブリッド醸造を実践しています。

出荷前の長期瓶熟成:瓶詰め後すぐには市場へ出さず、地下セラーで一定期間ボトルを寝かせて分子構造を落ち着かせます。抜栓直後から香りが開き、抜栓後数日経ってもへこたれない確かな熟成ポテンシャルをすべてのワインに授けています。
テイスティングワイン
アヌオワイナリーのワインに共通するのは、「人工的な補酸に頼らない天然の美しい酸」と「過度な重さのない、清らかでジューシーなテクスチャー」です。
以下のワインをテイスティングさせていただきました。
- 安諸 Dry White 2025 (プティマンサン100%)
- 久諸 Petit Manseng 2024 (木樽発酵)
- 雁湖 Marselan 2024
- 久諸 Dry Red 2023 (カベルネ・ソーヴィニヨン主体)
- Vineyard Anuo 2019 プティマンサン甘口

発酵中のタンクの中にまだ入っていた新品種(Ecolly)も試飲させていただきました。微発泡のフレッシュな果実味で今後の白ワインとしてポテンシャルを感じました。
おわりにーー畑と醸造が生む、唯一無二のテイスティング体験を
土地の声を聞き、科学と職人技で仕立て上げられたアヌオワイナリーのワイン。
その繊細で美しいバランスは、和食や軽やかなフレンチ、現代のペアリングシーンに感動をもたらすでしょう。
スペイン風のシャトー内にはレストランや客室を備えたホテルがあり、ジムやシアターも完備。畑を見下ろす湖畔でバーベキューやフィッシング、テニス、小高い丘へのハイキングも楽しめ、美しい丘の上で最高の一杯を味わうことができます。

訪問日:2026年9月
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https://vineuphony.com/inquiry/
Edited by 新井達也
JSA公認ワインエキスパート
Vin Euphony 代表



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