ココ・ファーム ワイナリー訪問
栃木県足利市のココファームワイナリーのワイングロワーズセミナーに参加してきました。3月から6月の第2、第4土曜日に開催されています。
ココファームワイナリーへのアクセス
東武伊勢崎線の足利市駅で降りて、タクシーかバス(あしバスアッシー行道線)でアクセスできます。バスの場合はココファーム入り口で降ります。時間は足利市駅から約30分、運賃は210円でタクシーより安価ですが本数が少ないので要注意です。


ワイングロワーズセミナーについて
ココファームの歴史、葡萄畑の栽培、醸造設備、瓶詰めまでの手順、ここから学園の園生の活躍の丁寧な説明と5種のココファームワインのテイスティングが含まれています。時間は2時間、費用は2026年3月28日時点で3000円です。
ココファームの歴史
セミナーで直接お聞きした内容です。もともと中学校の教員だった川田昇さんが知的障害のある生徒たちに社会で生きていくための体力と忍耐力を育てる目的で約70年前にこの平均斜度38度の急斜面の土地を自分のお金で取得し開墾を始めました。
川田さんは生徒たちと2年をかけて山を開墾しました。この作業を通じて生徒たちの身体と精神は十分に鍛えられたのですが、就職先がなかなか見つからない現実に直面しました。そこで川田さんは社会福祉法人こころみ学園を設立し、そこで葡萄栽培やしいたけ栽培の農業を生徒たちと進めることを生業としました。一年中畑で仕事があることがこの選定のポイントです。
最初の葡萄は生食用だったのですが高度成長期に売れ残るようになり、次の一手として川田さんご自身もお好きだったワインを作ることを考えつきました。ワインは保存ができます。酒造免許を取得や法人設立の費用などに苦労されましたが生徒たちのご父兄の支援もあり有限会社ココファームが設立され現在まで発展してきました。

葡萄栽培の特徴
足利のココファームの本拠地ではマスカットベリーA、リースリングリオン、プチマンサン、ノートン、アルバリーニョが主要品種です。山形の銘醸地上山市にも自社畑がありカベルネフランなどを栽培されています。自社畑以外にも北海道を含む全国の契約農家から実に多様な品種の葡萄を仕入れて足利の本拠地で醸造しています。
持続可能な農業
除草剤は使用せずに手作業で草刈りをおこなっています。土壌改良のために菜の花やクローバーを植えたり、堆肥を撒いたりするなど、有機的な農業を実践しています。日本特有の多雨や湿気によりベト病や晩腐病などにかかりやすいため農薬は使いますが園芸ボルドー液などの有機農業で認められているもののみ使用しています。(病気が広がるリスクが認められた場合は化学農薬も選択技になるとのこと)
また発酵させる酵母も培養酵母ではなく自然酵母を使用しています。年度ごとの香や味わいの差がでてきますが、ワインは工業製品ではなく農産物なのだから変化はつきものと割り切って考えられています。
ワインの熟成、貯蔵庫は山の側面を掘って建設した洞穴を活用しています。これもワイン造りを始めた川田さんの決定です。自然の力で一年を通じて14度前後に温度が維持されています。弱点は広いといえどもキャパシティーが限られていることで長期間の熟成ができないことにあるそうです。


温暖化対策
夏の昼間は40度を超える気温になり安全のために農作業時間も短縮傾向にあります。品種も暑さに強いものを随時導入されていてフランス南西地方で有名なプチマンサンは成功しています。ブドウの成熟過程で夜に気温が下がらないと酸度が下がってしまいますが、38度の急斜面がプラスに働いているのか今のところ深刻な影響はでていないようです。

こころみ学園の園生の活躍
手摘み収穫はもちろんですが、地道な雑草取りや何万房すべてのぶどうへの傘がけ、鳥被害対策として缶を叩いて追い払うなどの農作業、製造工程では葡萄選果や一本一本のスパークリングの動瓶(ルミュアージュ)、澱抜き(デゴルジュマン)、打栓(ブシャージュ)や、スティルワインの瓶詰めなど手間がかかる細かい作業で大活躍されています。
探究心旺盛なワイン造り
スタッフが世界の有名な産地を直接訪問され、その時に自身で確認された葡萄品種を積極的に試験導入されています。また世界最古のワイン産地として知られているジョージアで使われている醸造用陶器(クヴェブリ)も栃木の益子焼業者で特注で製造してもらい、それを使ってオレンジワインを製造されています。

ワインの実力
Novoスパークリング(リースリングリヨン)、プチマンサン、甲州FOS(オレンジワイン)、カベルネフラン(上山産)、シエスタびより(ケルナーの貴腐ワイン)を試飲させていただきました。結論から述べますがすべて大変すばらしい出来です。全体的に果実の甘み、酸、タンニン、苦味などが非常にバランスよく作られていて「美味しい」が自然に口にでてしまいます。醸造家のレベルの高さを感じました。この中でも甲州のオレンジワインに特に感銘を受けました。甘口ワインの製造過程で葡萄を乾燥させますが、園生が謝って乾燥させ過ぎたことがありました。他になにか利用することができないかと考え、オレンジワインの醸しに混ぜて作ったところコクが強まり更に美味しくなったというストーリーです。

日本ワインのキープレーヤーとしての存在
ココファームは多くの素晴らしい日本ワインの作り手を育成しています。ココファーム出身の著名な生産者がたくさんいます。規模が多いので働きながらワイン造りを学びたいという人を受け入れやすい環境にあり、上記で述べたように良いと思うものは積極的に取り入れていくという先取の精神があることがその理由ではないかと個人的に感じました。福祉、社会貢献活動という側面だけでなく美味しいワインを製造するという軸を常に発展させているところに深く感銘しました。温暖化もきっと克服していくことでしょう。今後の更なる発展が楽しみです。
最後に
畑では樹液の溢出が見られました。春になって活動を開始した葡萄の木の樹液が剪定した枝の先から涙のように滴る現象です。今年のワイン製造がここから開始されると言ってよいでしょう。期待しています。

By 新井達也
JSA認定 Wine Expert


